「個人間融資」という言葉を聞いたことはあるでしょうか?
SNSやインターネットの掲示板等の不特定多数の人が閲覧する場所で、「お金を貸します」「融資します」などの書き込みがあることがあります。一般には、こうした「見ず知らずの一個人が一個人にお金を貸すこと」が「個人間融資」に該当します。
日々金策に窮している、或いはコロナ禍で失業したなど、すぐにお金が必要な人にとっては、ただちに現金を融通してもらえるなら、相手は個人でも法人でも誰でもかまわないように思いがちですが、そうではありません。
気を付けなければいけないことが多数あります。
「個人間融資」の実態を知り、どんなことに気を付けなければならないのか、なぜ利用しない方がよいのかを見ていくことにしましょう。
そもそもお金を貸してくれるのはどんな人?消費者金融業者や個人、お金を借りるのに何が違うのか?
お金を貸してもらう相手先にはどんな所があるのでしょうか。
個人がお金を借りる相手として一般的なのは、身内から借りる場合を除けば、まずは銀行でしょう。しかし、銀行の各種ローンの審査に通らない時に次の候補として一般的なのは、消費者金融業者ではないでしょうか。
消費者金融業者は、無担保でお金を貸してくれるため、銀行の各種ローンに比べると金利は高くなります。
安易にお金を借りて返しきれないほどの借金を抱えてしまう多重債務者が深刻な社会問題になったため、平成18年にそれを解決するためにつくられたのが、「貸金業法」です。
「貸金業法」は、消費者金融業者などの貸金業者や、貸金業者からの借入れについて定めている法律です。
つまり、消費者金融業者などの貸金業者はこうした明確な法律の縛りがあります。
また、貸金業を営む場合は、国又は都道府県の登録を受ける必要がありますので、きちんと登録されている業者かどうかを調べることができます。
賃金業法で特に重要なのは以下の2点です
- 総量規制(平成22年6月18日から)があるため、年収に応じて借入金額に上限がある
- 総量規制(平成22年6月18日から)があるため、年収に応じて借入金額に上限がある
- 借入時に原則「年収を証明する書類」が必要なので、年収をごまかすことはできない。
- 借入金利にも明確な上限がある
- 借入金額に応じて15~20%
一方、「個人間融資」のようにお金を貸す相手が個人の場合は、繰り返し継続するつもりで金銭の貸付けを行わなければ「貸金業」とはみなされず、多重債務を防ぐための「貸金業法」の法律の縛りはありません。
国や都道府県に登録していないので、詳しい情報を調べる手段は直接本人に聞く以外にない、という違いがあります。
「貸金業法」の対象範囲は?
①の総量規制の対象となるのは、消費者金融業者などの貸金業者から個人が借入れをする場合です。
銀行からの借入れや法人名義の借入れは対象外です。また、住宅ローンなど、一般に低金利で返済期間が長い一部の貸付けについても、総量規制は適用されません。
借入時に収入証明書類が必要になり、年収の3分の1までしか借りられないなど、借り手にとっては不自由な法律のように思われるかもしれません。
しかし、銀行から既に年収の25%以内の住宅ローンや教育ローンなどを借りていたとしても、更に年収の3分の1(約33%)まで消費者金融業者から借入ができる可能性があると考えると、合計では最大で年収の約58%とかなりの割合の借入ができることになります。
ただし、逆は難しいかもしれません。つまり、消費者金融業者から既に年収の3分の1程度の借入があると、銀行での住宅ローンは借りにくくなる可能性はあるかもしれません。
②の上限金利については、どこの消費者金融業者で借りても上限金利は20%という制限があるので安心です。
そもそも「個人間融資」とは、どんな「個人」が貸してくれるのか?
一般論として、たくさん預貯金があるので、資産運用のつもりで見ず知らずの人へ融資を検討する個人は、まずいないといえるでしょう。
なぜなら、見ず知らずの個人へ貸すことへのリスクのほかに、貸金業法に抵触する可能性があるからです。つまり、「個人間融資」でのお金を貸す個人は、「単にお金持ちの一般人」ではない確率が高いことになります。
たとえ個人であっても、反復継続する意思をもって金銭の貸付けを行うことは、貸金業法上の「貸金業」に該当します。
また、SNS等で「お金を貸します」「融資します」などと書き込んで、契約の締結を勧めることは、貸金業法で規制されている「貸金業を営む目的で、貸付契約の締結について勧誘をすること」に該当する可能性があります。
貸金業を営む場合は、国又は都道府県への登録をしますが、「個人間融資」の個人の多くは、こうした正規の「貸金業」の登録をしているわけではありません。
その上で、貸金業に抵触するような勧誘を行っている可能性があります。無登録営業も、無登録業者による勧誘も、どちらも罰金の対象になっています。
こうした貸金業で義務づけられている貸金業登録をせずに貸金業を営む者は、「ヤミ金融業者(ヤミ金)」と呼ばれます。
「個人間融資」でお金を貸してくれる相手は、「ヤミ金融業者」である確率が高いということを、まずは覚えておく必要があります。
「ヤミ金融業者」からお金を借りるとどうなるの?「ヤミ金融業者」を縛る法律はないのか?
では、ヤミ金融業者からお金を借りると、借りる側にはどんな不利益があるのでしょうか。例えば、法律に違反するような高金利を要求されたり、悪質な取立てを受けたりすることがあり得ます。
お金を借りたら返さなくてはいけないのトラブルが横行しないために「ヤミ金融対策法」が平成15年9月1日より改正され、平成16年1月1日(一部を除く)から施行されています。
その内容には、以下が盛り込まれています。
高金利違反 | 3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金又は併科 ⇒5年以下の懲役もしくは1千万円(法人の場合3千万円)以下の罰金又は併科 |
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無登録営業 | 3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金又は併科 ⇒5年以下の懲役もしくは1千万円(法人の場合1億円)以下の罰金又は併科 |
では、こうした「ヤミ金融対策法」があるので、「個人間融資」でヤミ金融業者を利用しても大丈夫と言えるのでしょうか。
「個人間融資」のトラブルの具体例
「ヤミ金融対策法」があれば、ヤミ金融業者からお金を借りても問題なさそうだと考えるのは、残念ながら誤りです。
なぜなら、ヤミ金融業者は組織化されていて手口が巧妙で手が込んでいること、実際に違法行為があっても証拠を残しておらずそれが証明されにくいこと、などから検挙されるに至らないことが多く、罰則規定が適用されにくいと考えられるからです。
従って、国民生活センターなどの報告からも、「個人間融資」では以下のようなトラブルの可能性がありますので、絶対に利用してはいけません。
1. 法外な金利を要求される
「合計15万円を借り入れ、50万円以上の返済をしたが、その後更に400万円を請求される」などのケースです。
出資法で定められている上限金利は年20%ですので、通常であれば、15万円の借入に対する1年間の利息の上限は3万円です。上記は出資法違反で罰則の対象になります。20%の上限金利の目安は、1万円に対して1日約5.5円です。
「ヤミ金融対策法」では、登録業者・無登録業者を問わず、年109.5%を超える利息での貸付契約を行った場合には、当該契約は無効ですので、利息については一切支払う必要はありません。
ただし、契約書などの書面で違反を客観的に証明できる書類などがないと、こうした違反に対する罰則が有効に機能しない可能性はあります。
2. 個人情報を知られて、更なるトラブルに発展する可能性もある
ヤミ金融業者の中には、融資契約を結ぶ前の相談の段階でも、信用状況を判断するなどと言って、すぐに身分証明書や銀行の口座など、個人情報に関するものを要求してくる場合があります。
こうした個人情報を渡してしまうと、たとえ融資を断ったとしても、法外な手数料を取り立てるために自宅を訪問されたり、銀行口座を知られてしまったために勝手にお金を振り込まれて、その後違法な高い利息を請求されたりする可能性もあります。
また、お金を借りた後に返済ができないと、自分の銀行口座が乗っ取られて振り込め詐欺の振込口座に利用されたり、最悪の場合には、振り込め詐欺の一員として働かされたりするなど、自らが犯罪者になりかねません。
3. 融資の保証金として要求されたお金を詐取される
「100万円を借りるために、20万円につき1万円の保証金が必要などと言われ、5万円を支払ったが、その後相手と連絡がつかなくなった」ケースがあります。
早く融資をしてもらいたいばかりに、早めに保証金を振り込んでしまいがちです。相手に信用してもらう以前に、自分にお金を貸してくれる相手が信用できるのかどうか、見極める必要があります。
しかし、相手が個人では、信用力をしっかりと見極める情報や手段が乏しく、だまされてお金を借りられないどころか、保証金まで詐取された後も足取りがつかめず、支払った保証金を取り戻すのも難しくなるでしょう。
4. 融資の条件として下着姿や裸の写真など性的要求をされることもある
こうした写真を担保に取られてしまうと、ネットで公開するなどと脅されて、法外な高金利を請求され続けることにもつながります。
一番恐ろしいのは、こうした写真を一度担保に取られてしまうと、借金がいつまでも終わらないどころか、いつまでも脅され続ける可能性があることです。
こうした写真を要求するような相手からは、いかなる理由があっても絶対に金品を借りてはいけません。
人はなぜ「個人間融資(ヤミ金融業者)」を利用してしまうのか?
「個人間融資」とは、主にヤミ金融業者からお金を借りることにつながる、という実態がわかりました。
ヤミ金融業者は、決して「個人」などではなく、むしろ組織で運営されていることの方が多い可能性がありますので、トラブルに巻き込まれると「個人」では解決しにくい大きな問題になりかねません。
こうしたことから、ヤミ金融業者に手をだすことは得策とは言えないことは明らかです。
すべての人がそう認識してヤミ金融業者を利用する人がいなくなれば、ヤミ金融業も成り立たないはずです。それにもかかわらず、ヤミ金融業者がなくならないのは、こうしたところからお金を借りる人がいなくならないからでしょう。
なぜこのようなヤミ金融業者からお金を借りてしまうのでしょうか。理由は主に以下の3つが考えられます。
2.直ぐに現金が必要なので、審査や手続きに時間がかけられず、手軽で手っ取り早い手段を使いたい。
3.どこに相談すればよいのかわからない。
いずれも、「個人間融資」を考える前に、次の段落で紹介する相談窓口を利用してみるとよいでしょう。
トラブルを避けるためにとるべき行動とは?
何はともあれ、被害にあわないためには、甘い融資話に惑わされることなく、「個人間融資」の利用を一切しないことが最大の防衛策です。
その理由は、「個人間融資」は、お金を貸す人が無登録業者、高金利業者といった違法なヤミ金融業者である確率が高いからです。
融資の相談時
銀行等の融資が受けられず、他の金融業者などをあたる際には、利息計算・返済方法・返済期間・手数料・遅延損害金などを問い合わせてみましょう。
これらの内容を具体的にきちんと説明できない業者からは借りないようにすることです。
生活が苦しい場合(コロナ事情も含む)
地域の社会福祉協議会が行っている「生活福祉資金貸付」や、自治体独自の融資などを利用できる場合があります。詳しくは、最寄りの市区町村の窓口へ問い合わせてみましょう。
多重債務などで困っている場合
既にたくさんの借入金があり、それらを返済できないにもかかわらず、さらに日々のお金に困っている場合は、自治体の多重債務相談窓口や消費生活センター等に相談しましょう。
弁護士会等で無料の法律相談を行っているところもあります。金融庁「多重債務についての相談窓口」(下記)が参考になるでしょう。
違法な高金利の請求や悪質な取り立ての被害にあった場合
お金の借入れ・返済の状況が明記された契約書、その他資料、業者とのやり取りの録音データなど、犯罪行為を立証するための証拠を残しておくことが必要です。
まとめ
「ヤミ金融業者による「個人間融資」は利用しないように」と金融庁も注意を喚起しています。
ただ、相手がヤミ金融業者かどうかは巧妙に仕組まれていてなかなか見抜けない場合もあるかもしれませんので、「個人間融資」は利用しないに越したことはありません。
銀行の融資が受けられなければ、すぐに消費者金融業者を利用するのではなく、少しでも金利の低い融資が受けられる可能性のある公的な融資制度がないかどうか、まずは住んでいる市区町村に問い合わせてみることが大切です。